2020/04/22 16:57






コロナウイルス収束の先行きが見えず、不安です。病気にかかることもそうですが、経済的なダメージがもたらす不安が大きいのは明らかです。

 

ジャマイカでは慢性的に貧困な人が多く、並みの暮らしをするのにも必死で働かないといけないので、「金が無い!金が要る!」という会話を常に耳にします。それでも、餓死したとか、失職を理由に自殺というのはあまり耳にしません。貧困を理由に一家心中というのも聞いたことがありません。日本はジャマイカよりはるかに豊かなのにも関わらず、交通事故で亡くなるより自ら命を絶ってしまう人の方が多いというのは、なぜでしょうか。

 

国の状況が全く違うので一口に比べられませんが、私は常々ジャマイカの人たちの「それでも生きていく」生きる底力に勇気を与えられているので、皆さんにもそのエネルギーをお渡ししたい!

 

ということでブログ第2回は、ジャマイカの経済偏をお届けします。

 

・仕事、賃金

Googleで調べるとジャマイカの非雇用率は2018年のデータで9.45とありますが、私の体感としてはもっと多いので、10%を切っているというのは驚きです。「昨日は仕事があったけど今日は無い」という不安定な雇用状況の人たちがたくさんいます。2019年現在の最低賃金は7000ジャマイカドル(ほぼ7000円)で、平均収入は5万円くらいだそうです。ジャマイカで中流くらいの生活をしていたと思われる私の感覚だと、最低でも1ヶ月の収入15万円くらいは欲しいので(貯蓄したり車を持ったりすると全然足りませんが)、今日明日を生きるのも大変、という人がかなり多くいるということになります。

 



・格差社会

都市部では新しいビルやゴージャスなホテルが建ち、快適できれいなカフェやレストランも増えてきました。そのような発展の様子が見て取れる一方で、貧困に苦しむ人たちは依然として多くいます。丘の上に立つお城のような邸宅に暮らす人がいるかと思うと、ゲットー(貧しい人たちが暮らす地域)にはその代名詞であるzinc fence(ジンクフェンス=トタン)がひしめきます。そのトタンの内側では部屋のほとんどの空間をキングサイズベッドが占拠し、その上に家族7人が寝るというような状況が珍しくありません(そしてそこには不釣合いにドデカイTVがあったりする)。日本でも格差は問題になっていますが、お金持ちはいかにもお金持ち、貧しい人はいかにも貧しい感じで、国土が狭いせいもあってか、その差がとてもクリアに映し出されています。



出典: Scott Nelson photographer ゲットーの代名詞、トタン)

 

・ジャマイカの産業① 〜ボーキサイト〜

ジャマイカに代表される産業は砂糖・ボーキサイトなどの輸出業と観光業ですが、ボーキサイトは山をがんがん削ってアルミなどを採掘するので、環境破壊の側面があります。採掘の際に舞うホコリを吸い込んで健康不良を訴える人もいて、地域住民による採掘反対運動も起きています。しかしボーキサイト会社が地域還元事業としてたくさんの事業を行っているのは事実で、ボーキサイト会社からの資金援助をかなり頼りにしている地域団体が多く存在します。地域の農家を応援するファーマーズマーケットや、子供のための運動会を開催したり、奨学金援助なども行っていて、どちらかと言うとポジティブなイメージで受け止める人も多い一方で、採掘による水源破壊の危険性なども指摘されており、反対派からは政府の対応を求めるデモが起こったりもしています。ところでジャマイカの国土はちょうど秋田県くらいの大きさですが、あと30年くらいで全てのボーキサイトを掘り起こしてしまうという話があります。その後一体どうなるのか??について話す人があまりいないのは不思議です。

 

(家の近所のボーキサイト会社、ノランダ。以前はアメリカ資本の会社だったが、数年前に中国の会社に売却された。)



ジャマイカの産業② 〜観光〜

ジャマイカはカリブ海に浮かぶ島で、マイアミから飛行機で1時間半で来られます。政府も観光業に力を入れており、コロナが流行る前ですが、超大型クルーズ船で何万人というアメリカ人がジャマイカにやって来るというニュースを見て「私の商品を観光客に売れる!」と喜んでいた私。ところが、クルーズ船で来る観光客は旅行会社が手配したバスに乗って観光地に直行するので、街中にはそれほど観光客を見かけません。「なぁんだ、私たちにはチャンスは無いのね」とがっくり肩を落としたわたしでした(観光会社などがジャマイカ政府に税金をたくさん納めてジャマイカの底上げに繋がるのかどうかは知りません…)。

コロナウイルスで観光業が大打撃を受けているのはジャマイカも同じです。わたしの友人が勤めているリゾートホテルもすべて閉鎖しており、仕事がありません。休業補償もどれだけ出るのか、出ないのか(出ないかな…)、分かりません。

 

(家の近くにある観光名所、ドンズリバー)



(オーチョリオスには週に何度も大型のクルーズ船が来ていたが、現在はコロナウイルスの影響で入船は無い。経済的打撃はすさまじい。)



ジャマイカの産業③ 〜エンチョペニャー〜

エンチョペニャーとは、英語で企業家のことで、Entrepreneurと書きます。わたしは時々行政の地域開発部みたいな機関と関わって活動していたのですが、彼らが地域開発のために今とにかく推進しているのがこのエンチョペニャー、地域企業家なのです。<産業が少ない→仕事がない→貧乏>のサイクルを絶つには仕事を生み出すしかない!豊かな暮らしを求めて外国に移住するばかりではジャマイカがいつまでたっても貧しいままで、それではいかんということで、国内の企業家を応援するイベントがたくさんあります。Hustle(ハスル)という英語は「もがき苦しみながら頑張る」みたいな感じで使いますが、ジャマイカではみんなHustleして生きています。結構余裕がありそうな人でも「実はサイドビジネスが3つありまして」という感じで、やれる事を全部やらないと生きていけない。彼らのその力強さ、粘り強さは、わたしを魅了する要素のひとつでもあります。


CHAKA CHAKAは起業家応援イベントにも度々出店していた。訪問した政治家にCHAKA CHAKAのストーリーを売り込むわたし。)


とは言え、大変は大変です。貧困と犯罪は比例しますので、コロナウイルスの影響でジャマイカがますます貧しくなってしまうと、治安も悪化してしまいます。今は何も出来ないですが、ジャマイカにいるみんなのことを、本当に本当に心配しています。

 


ジャマイカの産業④ 〜農業〜

ジャマイカという国名は、「木と水の大地」という意味の「ザイマカ」という言葉が語源だそうです。その名の通り自然豊かな島なので、農業が盛んで食料自給率が高くてもよさそうですが、実際はそうではありません。ジャマイカのような貧しい国が世界銀行などからお金を借りる際、その代わりにたくさんの条件を突き付けられます。税金の遣い道から輸出入に至るまで様々な条件を飲まされ、国内農産物を守るための関税も撤廃されられて、外国産の安い食べ物が大量に流入し、国内農家が価格競争に勝てず潰れる(日本で危惧されるTPPの問題に似ていますね)。Life and Debt-ジャマイカ楽園の真実-というドキュメンタリーがジャマイカの辿った苦しい経緯を分かりやすく映していますので、興味があればDVDを通販で買って観てください。それにしてもなんでわざわざジャマイカで中国産のにんにくや玉ねぎを食べることになるのか。グローバリゼーションって一体なんやねん?と思わずにいられません。一方、ジャマイカ政府はGrow what we eat, eat what we grow”「食べるものを育てよう、育てたものを食べよう」というスローガンを立て、食料自給率アップに取り組んでいるようです。

 

 


経済的自立なしに本当の自立は無い

ジャマイカの7人の偉人の中にMarcus Garvey(マーコス・ガーベイ)という黒人解放運動化がいます。彼が訴えたことの中に「経済的自立」というのがあって、これはまさにジャマイカが求められていることであります。なんてったって世界で海外送金先国ナンバーワンのジャマイカ。外国の親類がせっせと外国で働いてジャマイカの家族に送金しなかったら、ジャマイカは立ち行かないのです。どれだけ政府が国税で職業訓練等を行っても、スキルのある人は結局安定した給料を求めて外国へ移住する。その人たちはジャマイカではなく基本的にはその居住国で税金を納めるわけですから、ジャマイカの利益として還元されないのです。医療などの技術がなかなか発展しないのも、腕のある人が海外に流出してしまうからです。「そんなん変やわ、ジャマイカ国内で一生懸命働けばそれなりの暮らしができるようになるべきやわ」と思う若い人たちが、自分のビジネスを立ち上げ、奮闘しています。CHAKA CHAKAを立ち上げた背景には、そんな彼らに混ざって、大好きなジャマイカで暮らし続けたい。ジャマイカの人たちと共に働いて、お互い豊かになっていきたい!という私の想いがあります。



Aisha Inpirations わたしの大の仲良しはジュエリーデザイナー



(様々なイベントに出店するAisha(アイーシャ)が何から何まで教えてくれた。彼女無しでジャマイカでのCHAKA CHAKAの活動は考えられない!)

 


生きる底力 -「助けて」と言えるかどうか-

ジャマイカの宗教についてはまた別で書こうと思うのですが、ジャマイカの人たちがあんなに強いのは、神を信じているからです。すごく辛い経験を乗り越えた人に「どうしてその試練を乗り越えられたのか」と訊ねると、必ず「神を信じているから」という答が返ってきます。わたしは特定の宗教は持ちませんが、神を信じる人たちの強さを何度も目の当たりにしてきました。どんな時も諦めず生きていれば必ず報われると信じ、今自分が受けている恩恵に改めて目を向け、そのことに感謝する。持たざる者の苦しみを理解し、助ける。そのような信念を持つ人は、宗教家であろうとなかろうと、精神的に強いです。そして、ジャマイカの人たちに長けているのは「それちょうだい!」「金貸して!」「ご飯食べさせて!」と助けを求める能力です。助けを求めるのは恥ずかしいことではなくて、生きる力です。戦後最悪といわれる不況を迎える今、その能力があるかないかで生死が分かれます。そして、どんな時でも楽しいことを見つけることも大切ですね。お金が無くても踊っているジャマイカ人、すごいなぁと思います。本当に大変な時ですが、なんとかみんなで踏ん張って生きていきましょう!We shall overcome! 



(お金があっても無くても朝まで踊るジャマイカ人)


 

〜パトワ語コーナー〜

 

今回は、wah a gwaan? (ワーグワン)という、とっても便利なジャマイカのあいさつをご紹介します。

 

ジャマイカ     Wah a gwaan? わぁぐわぁぁん?

英語                What is happening?  What is going on?

日本語            どうですか?元気ですか?

大阪弁            まいど。どないや?

 

マニア向け文法的解説

wah: what

a: be(is, am, are)

gwaan: go

 

abe動詞の役割を果たすので、英語でbe ingで現在進行形を作るようにaを動詞の前に入れると「○○している」という意味の、現在進行形になります。

例:mi a go= I am going  mi a come= I am coming

 

「元気?」という挨拶以外にも、「どうしたの?」「何が起こっているの?」というように、Wah a gwaanの使われ方はシチュエーションによって様々です。強調したい時は A wah a gwaan?!”というように最初にaを入れて、Gwaanの最後のnを強く「グワァーン(ヌ)?」みたいに発音します。強調したい時にnの発音が強くなるのもパトワ独特です。

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